
2022.11.17 (Thu)
PROJECT DIARY Vol.9
断熱のスペシャリストである株式会社リコシスの齊藤さんが、ワーケーションハウスの現場を訪れ、プロジェクトメンバーや大工さんへ、断熱工事のアドバイスをおこないました。
もともと齊藤さんは北海道の建設会社に在籍しながら、地中熱ヒートポンプの研究に従事してきた経歴を持つ、再生エネルギーのプロフェッショナルです。
科学的にも現場的にも、断熱について熟知する齊藤さんは、自らの経験とノウハウをもとに「エコキューブ」という省エネリノベーションプログラムを開発し、現在その普及に取り組んでいます。
断熱工事が施された箇所をひとつひとつチェックしながら、的確にアドバイスをしていく齊藤さん。
普段から断熱リノベーションをおこなっている、はぴりのやリノベエステイトのスタッフにとっても、新たな発見や気付きがあるようです。
齊藤さん曰く、断熱リノベーションの最大のポイントは「気密」なのだそうです。
「どれだけ多くの断熱材を使ったところで、すきま風が入ってしまえば家は寒い。穴だらけのダウンジャケットを着ても意味がないですよね。それと同じです。いかに隙間を作らないか。気密性の徹底こそが、断熱リノベのポイントです」(齊藤さん)
今回の断熱工事によって、この家の断熱性能を示すUa値(※1)は、大幅に改善する予定です。
改修後のUa値は断熱等級のレベル5に該当し、2022年4月に新設されたZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たした、極めて高い断熱性能になります。それによって年間の電気代が、約2分の1に抑えられる見込みです。
「プリウスの登場で車業界にエネルギーシフトが起きて以来、車には”少ない燃料でどれだけ長く走れるか”が求められています。ぼくたちが若い頃は、燃費の悪い車はむしろステータスでしたが、今は燃費の悪さを自慢するような人はいませんよね。家も同じような考え方に必ずなります」(齊藤さん)
(※1) Ua値(外皮平均熱貫流率)は、住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値です。熱損失の合計を外皮面積で除した値で、値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネルギー性能が高いことを示します。
現在、日本の環境問題に対する意識は、世界的にワーストレベルと言われていて、国の対策も遅れをとってきましたが、齊藤さんはあと2年もすれば「国は本気で住宅業界に省エネを求めてくる」と言います。
「価格上昇で新築を建てることが難しくなった今、CO2削減のために中古リノベーション業界が担う責任は、非常に大きいと考えています」(齊藤さん)
このプロジェクトによってリノベーションの新しいカタチが提示され、業界も省エネへの意識や取り組みが変わってくるのかもしれません。しかし何より大切なのは、私たち一般消費者が「省エネについて本気で考えること」なんでしょうね。
記事を書いている人
福岡市在住のフリーランスWEBデザイナー。
自らも築40年の中古マンションを購入してリノベーションした経験あり。